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通常国会が1月23日、召集された。岸田文雄首相は施政方針演説で、日本が置かれた現状について、「再び歴史の分岐点に立っている」との認識を示した。
ロシアのウクライナ侵略という国際秩序に対する挑戦は今も続き、中国は台湾統一をにらみ、武力行使も辞さない構えを見せている。北朝鮮も核・ミサイル開発に余念がない。
日本は歴史の分岐点に立つ大事な年に、先進7カ国首脳会議(G7サミット)の議長国となり、国連安全保障理事会の非常任理事国にもなった。首相が担う責務は極めて重い。
岸田首相は演説で「強い覚悟を持って、新たな時代にふさわしい国際秩序を創り上げていかねばならない。世界を先導していく」と語った。国際秩序の形成に主導的な役割を果たしていくという決意の表れであり、評価したい。
これまで演説の後半にだけ盛り込まれることが多かった防衛政策を、冒頭の政治姿勢などに次ぐ位置に持ってきたのもよかった。
政府は昨年12月、国家安全保障戦略などの安保3文書を閣議決定し、反撃能力の保有や防衛費の大幅増を盛り込んだ。この歴史的大転換ともいうべき政府方針について、首相は先の訪米でバイデン大統領に伝え、抑止力と対処力を強化することで一致した。
防衛力の強化策を実行に移さなければ国民の命と安全が守れない。事態はそこまで悪化している。首相はこれらのことについて、国会論戦を通じ、丁寧に説明してほしい。
与野党は防衛費の財源論を巡る議論に終始せず、抑止力をどのように高めるのか、大局に立った議論をすべきである。
国の命運を握るのは、防衛力の強化にとどまらない。エネルギー政策もまた、しかりである。ウクライナ侵略をきっかけに、繁栄の基盤であるエネルギー供給が脅かされている。首相は原発の活用についても説明を尽くし、国民の理解を得なければならない。
演説で物足りなかったのは憲法改正に関してだ。「先送りできない課題」としながらも「より一層議論を深めてもらうことを期待する」と述べるにとどまった。
防衛力の強化と憲法改正は表裏一体である。改憲原案の策定に向けて、強い指導力を発揮してもらいたい。
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2023年1月24日付産経新聞【主張】を転載しています